TextAD
無料
-
出会い
-
花
-
キャッシング
ホント、生命の神秘がイヤでたまりません。
分類不可8
隼人は、アメフト部のエースで、頭も良くて、顔も良くて、スタイル良くて、ギターもひけて、砂を吐ける言葉なんて真顔で言う。
そのくせ、どっか抜けてると思う。
言ってることは時々宇宙語みたいなんだわ(リタルダントって何だ!)キザだわカッコつけだわで。
その上にデリカシーのない言葉も真顔で言う。
今日の朝まで月の日の二日目だけど悟られないように痛いの我慢して普通の顔してたけど自分で宣言しちゃったしもういいかな。
生理って周期はあるけど痛さはその時で違う。今月痛いと来月はそんなに痛くないとか、ホントまちまち。
今回のはお腹の中でどっかの部族がズンドコズンドコ太鼓を鳴らしてる感じに痛い。
「どうした?」
「……痛い。月からの使者が攻撃してくる」
もう隠す必要もなくなったからシャワーだけ浴びるとすぐにベッドに転がって一人で唸っていると隼人がコーヒーの入ったカップ片手にやってきた。
隼人は私が起き上がるのを確認してベッドの縁に腰掛ける。
「口に出したらもっと痛くなってきた。バカ、隼人のバカ」
「それは俺のせいじゃない」
怨念をこめて、この痛みが隼人のところへ移動してくれたらいいなとか思ってバカバカと連呼してみる。
返事はため息ひとつだった。
お腹の痛みも晴れず、ムカついただけだった。
「飲むか?」
黒々とした液体が差し出される。
そんなもの飲んでる気力ない。断ると隼人はそうか、とだけ言って自分で飲んだ。
「痛いの痛いの赤羽隼人に飛んでいけー」
「それは困るな」
独り言だったのに。いや聞こえるように言ったんだけれど。
隼人が困ったような目をしている。
「私は全然全く困らない」
「せめてコータローのとこにでも飛ばせ」
夕飯前までの会話を思い返す。コータローと仲悪いって言ってたしなぁ。
「それはコータローが何となく可哀想」
寝転がって、もぞもぞと布団を被り直す。
こんなワケわからないお腹の痛みがいきなり来たらコータロービックリするだろうな。一人で大騒ぎしてそう。
「フ――俺は可哀想じゃないのか」
「うん、なんだろうねこの差」
「こっちが聞きたい」
答えなんてわかりようもなくて、適当に笑って返す。
っていうか別にコータローはどうでもいいよ。お腹の痛みが晴れるワケじゃないよ。
布団が段々暖かくなってくる。
照明が明るい中でもゆっくり脳が思考を停止していくのを如実に感じ取った。
「…」
「んー?」
もう半分意識を飛ばしかけていたのを薄目を開けて反射的に返すと隼人の手が伸びてきて、私の濡れたままの髪を触った。
「何でもない。オヤスミ。ゆっくり寝ると良い」
何多分何か言いたかったんだろうけど。ほとんど睡魔に侵されている私は聞き返す余裕もなかった。
「うむ」
なんだか尊大な返事になってしまったが、私はそのまままどろみの中に落ちることにした。
[PR]
動画