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朝起きるとお客さん布団(隼人使用)が綺麗にたたんであるその横のテーブルに袋にはいったお弁当箱が二つ並んであった。
いやまさか私に弁当二つ食えとかいう意味じゃあるまいし、多分一個は隼人が忘れていったヤツなんだろうなぁ。
……え、まさかコレ届けなきゃいけない?
分類不可6
いつもより少し早い登校。体育系部活の掛け声や吹奏楽部の合奏が聞こえてくる。
「ジュリー」
グラウンド脇のベンチでボードとタイムウォッチを睨めっこしてるジュリに声をかける。
ジュリは振り返るとちょっと目を丸くしたが手を拱いてフェンス外の私を招いた。
「どしたの? コータローに何か用事?」
上にあげた円いサングラスがチカチカと光る。
ジュリとはいつかコータローとだべってた時知り合った子だ。
そんなに多く話したわけではないのだが私は彼女のサバけた性格が好きだった。
「コータローってアメフト部だっけ?」
そう言うとジュリがグラウンドの一点を指さす。
指の先を辿るとポールを前にボールを蹴り飛ばす部員が一人いた。
防具で顔が見えない。そう思いながらぼーっと眺めていると楕円のボールがクルクル回りながらポールの上を通過する。
「おおおおっしゃスマートだぜ!」
あ、コータローだ。
よく教室でキックがどうの言ってるからてっきりサッカー部か何かだと思ってたんだけどアメフト部だったんだ。
「まぁあのバカじゃなくて二年の赤羽隼人さん一人貸し」
「ちょっと待って」
ジュリは鋭く私の言葉を遮るとストップウォッチをじっと睨みつけ数回リズムを刻んだ後首にかけていたホイッスルを鳴らした。
「ハイ終わりー! アンタ達さっさと片付け初めてー!」
はーい、と疲れた声で低く反応がかえってくる。
「で、えぇっと赤羽だっけ?」
「うん。ア、居た」
顔をあげると丁度隼人がヘルメットを脱いでコータローに何かガミガミ言われながらこっちに向っているところだった。
「隼人、ちょっと部室まで案内しなさいな」
近くまで来ると両方私に気付いたらしい。コータローが何か言いかけるのを感じ取って隼人は無言で頷くと私の背を押してさっさとグラウンドから出るように促した。
「フー…どうしたんだ?」
横に並んで歩きながら隼人が少し疲れたような声で言った。
よく見たら暑そうなユニフォームのまんまだし汗だくだ。
「忘れ物」
体育系部の部室はグラウンドの脇に設置されてある。
隼人がドアを開けて電気をつけると雑多に物が散乱した部室が目に入った。
私は隼人の後に部室にお邪魔して後手でドアを閉めた。
鞄を開けてお弁当(青)を取り出す。
「ああ、弁当か……スマナイ」
弁当箱を受け取って初めて弁当を忘れていたことに気付いたらしい。
隼人はロッカーから自分の鞄を引き出して丁寧に弁当箱を鞄に入れた。
「うんまぁ最初は私が二つも弁当食べるような大食らいだと思われてるのかとも思いましたが」
「二つも食べたらまた太るぞ」
「ひぃぃ乙女のNGワード! っていうか待て。『また』って何『また』って」
隼人が家に来てから体重増えた覚えはありません。一人暮らし中でも三食キッチリ食べてましたから。
「昨日からリズムが狂っ……あぁ、生理か。なら合点がいくな」
「セクハラで訴えられてしまえ!」
人の月からの使者をそう簡単に言い当てられるこの男は未来の彼女からしたら相当厄介なんだろうなぁ。
しかも何が怒られる要因になったのかよくわかってない。首傾げるな。
「まぁとりあえず渡すモン渡したから私帰りますよ」
この話はこれ以上しない方がいい。突っ込まれたら何か最終的にこっちが困る気がする。
きびきびと踵を返して颯爽と立ち去ろうとすると目の前にドアが迫ってきた。
痛。
「お、ワリー」
「悪いと思うならもっと誠意ある謝り方してよ」
じんじんする額を摩りながら顔をあげるとドアノブを握り締めてコータローが苦笑いしていた。
「コータロー、次芸術なんだから早くした方が良いよ」
「マジか!」
「嘘言ってどうすんの」
コータローの隣をすり抜けてちらりと振り返る。
「じゃぁね隼人」
「ああ」
軽く手を振ると隼人が目を細めてこちら眺めていた。
単行本貸しっぱで盤戸の部室の描写が恐ろしく適当と想像です。ゴメンナサイ。
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