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「あ、アレン君!」
「……なんですか」
何か機嫌悪いらしい。
なまえ
談話室に入ったらアレン君を発見。
名前を呼ぶと一応振り向いてくれたけどなんか不満そうにしている。
神田じゃあるまいし、名前を呼んで不機嫌になられたなんてことはないと思うけど。
「いや、特に用事という用事はないけどね。暇なんだ」
アレン君の前のソファに深々と腰を沈める。
むにむにとソファに体が沈み込む。この感触がたまらない。
「龍彦の整備も終わったしーコムイさん任務くれないしー神田はなんかまた怒ってるから近寄りたくいし」
神田怒らせたのは私だけど。余計な一言は飲み込んだ。
アレン君が拗ねたように床に目を遣る。
「僕はコムイさんと神田の次ですか」
「うん、今日コムイさんと神田の次に会ったのがアレン君」
「……」
アレン君が無言のまま動かずにため息をつく。
神田の次というのが嫌だったのかな?
間にリナリーでも挟むべきだったのだろうか。
それにしても機嫌が悪い。
なんか神田の機嫌の悪さとは違うタイプだ。
「アレン君何かあったの? 朝食の一品神田にでも盗られた?」
いつものあの量じゃ一品ぐらい減っても変わらない気がするけど。神田が盗るとか有り得なさそうだけど。
「違います」
短く答えてアレン君が顔をあげる。
眉尻を下げて不安そうに私を見てまた目を伏せる。
「……はリナリーのこと、何て呼んでますか?」
「? リナリー」
なんだろう、いっつも横でリナリーと呼んでるのに。
「リーバーさんのことは?」
「リーバーさん」
「ジェリーさんは?」
「ジェリーさん、ジェリー師匠」
「神田のことは?」
「神田。バ神田・ミ神田・イス神田ルて呼んだら前に怒られたけど神田のいないところではたまに呼んでる」
アレン君の意図が全くつかめない。
淡々として見えるけど突然『ここでボケて!』なんて札出されたらどうしよう。
それから何人かエクソシストの名前が挙げられた。
いつ出てくるかわからない空想の札に内心ビクビクしながら、当たり前のことを答える。
「僕のことは?」
「アレン君」
当たり前のことを答えた筈なのにアレン君はそれで質問を打ち切ってソファの背凭れに寄りかかった。
半目で背凭れをよじ登るティムキャンピーを眺めている。
一体何が彼のお気に召さなかったんだろう。
腕を組んで考えてみる。
別に何も変なこと言ってない。というか、いつもアレン君の目の前で言ってる。
神田みたいに今日になって急に名前が嫌いになったりとか? まさか。
私がボケなかったからとか? いやそんなまさか。
「アレン君、一体どうかしたの?」
「……」
半目のまま首を動かさずにこちらを見る。
一瞬躊躇ったように開けかけた口を閉じたが結局不貞腐れたように口を尖らした。
「君づけ……」
「へ?」
「今までずっと君なんてつけてなかったのに」
拗ねたようにアレン君が目線を逸らす。
そういえば私アレン君と呼んでいたね、今日になって。
……どこにいじける要素があるのか私にはわからない。
「え? や、ゴメン。リナリーとかコムイさんと一緒にいると移っちゃってさ、呼び方」
アレン君が背凭れに顔を埋めたままへーとかはーとか生返事してくる。
拗ね方が何か可愛いよ。小学生みたいだよ。年下みたいだよ。
「えーと、じゃぁ…モヤ」
「お・こ・り・ま・す・よ?」
瞬時に反応を見せた白髪の彼が左手の手袋を外しながら目の笑わない黒い笑顔で笑う。
いつもとは違う味を!なんて考えたのがいけなかったらしい。
ティムが怯えてこっち来た。
「……冗談です、スミマセン」
「当たり前です」
「アレン」
「ハイ」
「いや、なんでもないけど。暇なんだ」
嬉しそうに返事する彼を見て、彼が年下に見えたのは初めてのことじゃないかと思った。
…実際私の方が年上なんだけど。
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