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「―――!!!」
「うぉぉあ!?」
ずべしゃ
だーれだ
「−久しいさー会いたかったさー!」
「いったァーラビの愛情表現痛いぃー私腰打ったー」
目の前にオレンジの髪が見えます。オレンジ髪の人が私の上に乗っててしかもすりすりマーキングしてきます。
強烈なタックルのお陰で私腰うっちゃったじゃないの。
「腰のせいでお嫁に行けなくなったら俺がもらってやるから安心しー」
ゴン
鈍い音がしてラビの頭上にいきなり花瓶が落ちてきた。
花瓶はラビに当たった瞬間ヒビ割れて転がっていき、ラビはグッタリ私に凭れ掛かってきた。重い。
「ラビ、そこ退いて下さいね」
ラビが見覚えのある大きな手に掴まれてだらんとしたまま上空に持ち上げられた。
見上げると白い髪の男の子が極上の笑顔でニコニコして立っていた。
アレンは片手でラビの頭を掴んでちょっと左右に揺らして、今度は無造作にラビの体を放り投げた。
いい音がしてラビの体がツルツルの床の上を転がっていく。
「大丈夫でしたか?」
「うん。でも花瓶とラビが大変」
「よかった無事で」
アレンが息をついて胸を撫で下ろす。
私の話聞いてないなコンニャロウ。
アレンは花瓶を足で退けると私を抱き起こして立たせた。
「アレンひでぇさー俺はただと再会の喜びを分かち合ってただけなのに」
服をはたいているとひょこひょこと少し埃にまみれたラビがホール向こうから戻ってくる。
ズボンがちょっと黒くなっていた。
「無理やり言い寄ってるようにしか見えませんでしたけど」
じっとアレンがラビを睨む。
なんていうか、神田と違ってアレンの睨みはじっとりしてる。呪いの言葉とか飛んできそうな感じがする。
「俺そんな強引な男じゃねーしぃー」
「嘘だー」「嘘ですね」
思わず返答するとアレンとハモった。
しかもラビには効いたらしく隅の方でいじけ始める。
「じゃぁ、談話室に行きましょうか?」
「うん行くー」
アレンが私の手を引く。ラビは放っておく気らしい。
面倒だから私も放っておこうと思う。どうせ寂しくなって後からついて来るし。
階段を上る時、アレンが何か腰に手を添えてきたから介護でもされてるお婆ちゃんの気分になった。
多分この前階段を滑ってズリ落ちてたの見られたんだと思う。
「わーい神田神田ーかんだー朝ぶりぃー」
「わーいユウユウー久しぶりー」
談話室に着いたらいじけながら付いて来たラビの機嫌も今や神田の読書を私と邪魔するまで回復したらしい。
神田が怒ったように本を閉じた、ちょっと黄色信号。……神田の場合常時黄色信号っぽいけど。
アレンは困ったように向こうのソファからこっちを眺めている。でも止める気は更々ないらしい。
「うるせぇ」
「えー数ヶ月ぶりにあった友達にそれはないっしょー」
「そーだよー3時間ぶりに会った友達にひどいよー」
ねー、とラビと顔を見合わせて首を傾げる。神田は無言のままこっち睨んできた。
「一人でもウゼェのに二人も居ると余計ウゼェ」
「ウザイって言ったー! 女の子に向ってウザイって言ったー!」
「可哀想にー俺の胸の中で存分に泣きなー」
バッチこーいと目茶目茶笑顔でラビが腕を広げた。
タレ目だから笑うとすっごい嬉しそうに見える。
「えー」
なんかここで飛び込んだら離してくれなさそうだ。
渋っているとラビは自分の胸をバンバン叩いて促してくる。
「神田ー年頃の女の子に抱きつこうとしてくる人がいますー」
「変態」
「変態ですね」
「ヒデー!」
神田の横に座ると横からぎゅっと抱きしめられる。
嘘! と思ってキョロキョロしたら抱きついてきたのは神田でなくてアレンだった。
いつの間にかこっち移動してたらしい。
つか年頃の女の子に抱きついてますよアレンさん。しかも肩口に頭摺り寄せてあなたもマーキングですか。
ここはツッコミを入れるべきなんだろうか。と思っていると前のソファにどっかり座ったラビがこっち凝視していた。
突発・にらめっこだね! ラビをじっと見返すとラビが口を開けた。
「さー、ちょちキレイになったんじゃねーのー?」
!
いきなりだったから何言われてるのか一瞬わからなかったけどすぐ理解できた。
ラビ凄いね。何でもお見通しだね。
「恋する乙女は須らく綺麗になるんですー」
「え、恋してんの!?」
ちょっと女の子らしく顔に両手をあててしなを作ってみると両脇からため息ともつかない声が漏れた。
聞こえてますよお二方。
「誰誰? 教団の奴? エクソシスト?」
ラビが身を乗り出して聞いてきた。目が輝いてる。
「教団の人で、背が高くって優しくて強そうで女心を理解してる大人な男性でちょっとミステリアス。さぁだーれだ」
「ハ?」
折角大ヒントを与えたというのにラビが腕を組んで首を傾げ始める。
いや何でよ、わかるっしょ普通。
「背…コムイ? …弱そうだし……ユウもアレンも大人ってわけじゃねぇし…」
反対側に首を傾げてラビがうんうん唸る。
何でわかんないかなー。
ラビの回答を待っているとその後で談話室のドアが開いた。コムイさんだ。
コムイさんはちょっとキョロキョロして私と目が合うと軽く手を振ってきた。
「ちゃーん、ちょっとコック足らなくてさー今日だけ厨房入ってくんなーい?」
「いいんですかー?」
「いーよー、ジェリーと喋ってても邪魔にならないようにへばり付いててもいーからー!」
私はすっくと立ち上がってアレンの腕を解いた。キャーとか何か黄色い声あげちゃったかも。
「コムイさん大好き! 待っててししょぉー!」
居ても立ってもいられなくなって、私は三人を放っておいて思わず駆け出した。
胸の奥から高揚感が伝わってくる。これが恋だね!
談話室のドアの向こうからラビの悲鳴ともつかない疑問の叫びが聞こえた気がする。
でも立ち止まる気なんてない。
アレンが地味にセクハラしてる。
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