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「でも現地妻みたいなのいないの? 任務行った先とかで」
「ンなもん作るとしたらラビぐれぇのもんだろ」
別に、理由なんてない
「でさー、聞いてよ。ラビったらちょこまかちょこまかお姉さんに惚れてくんだよー」
背中に体温を感じる。
任務もなくゆっくりしようと思っていた矢先だった。
俺の部屋だというのにズカズカ入ってきた侵入者は俺の許可もないしベッドにのぼり、本を読んでいた俺にもたれかかってきた。
ベッドの上で背中合わせに(が一方的にもたれかかってきてる)が何か愚痴を吐いている。
ラビと買い物に行ったときの話らしいが、読書の邪魔だ。
「しかも声かけられたらフラフラーと呼び寄せられちゃうの。荷物持ちにはなるけど時間かかっちゃうのが難点だね、ラビは」
そう言っては抱きこんだ俺の枕をパスパス叩いた。ヤメロ。
「あ、それでさ、思ったんだけど。神田はそういう女の人いないの?」
「……は?」
枕を叩くのを制止しようとした口がうまく動かなかった。
それ以前にこのバカの言っている意味がわからねぇ。
「神田って見た目は女受けしそうだもんねー。あ、でも寄ってくる人全部睨み付けそうだから女の子も怖がって逃げちゃうか」
「うるせぇな」
「でも現地妻みたいなのいないの? 任務行った先とかで」
「ンなもん作るとしたらラビぐれぇのもんだろ。第一女なんかウゼェだけだ」
「それ女である私に対しての密やかな挑戦状ですか?」
「……」
このまま話を長引かせるのは得策じゃない。
に駄々こねられて一日無駄にするだけだ。
俺は舌を打って英文の羅列されたページに目を落とした。
…あ? この本いつのまに資源の話になってやがんだ?
くそ、コイツ来てから全然内容頭に入ってねぇな。
「あ、でもね神田」
背中が軽くなったと思ったらが横に移動していた。
いつもの能天気な面に更に締まりない笑みを浮かべている。
「もし恋人ができたら絶対教えてね。存分に冷やかしたげるからさ」
奇妙な空気でも一瞬吸い込んだかと思った。
得体も知れない感覚が聴覚を侵したかとも思ったががジェリージェリーと騒いでいるのが聞こえるからそうでもないようだ。
読書を諦めて本を閉じると適当に机の方に放り投げた。
同時に焦りに似た苛立ちが頭上から降ってくる。
舌を打つとが不思議そうに覗き込んできた。
「神田?」
「ンだよ」
「……機嫌悪い?」
「別に」
「嘘ー。イライラしてるっしょ」
「…黙れ」
「いきなりじゃない。どしたの? 何かムカつくこと本に書いてあった?」
「違う」
「じゃあ何?」
「知るか」
俺が教えて欲しいぐらいだ。
言葉を切って横になるとは何を勘違いしたのか一緒になって寝転んだ。
別に昼寝をするつもりはなかったのだが横でもう寝る体勢に入ってしまっているバカを見ると何ともいえなくなった。
ただ先ほどまでふつふつと湧いていた苛立ちがどこかに消えている。
一つため息をついて、俺は眼を瞑った。
このヒロインよく寝てる。
もどかしすぎてこっちが逆に苛々しますよこの二人。
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