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線路の枕木に合わせて列車は定期的に揺れる。
最後尾で風に吹かれながら白い髪をした少年が色の弱い双眸を細めて眉間に皺を寄せていた。
「寒くねぇ?」
少年が顔を上げると垂れ目の男が軽く手を振りながら歩いてきた。夕日のような朱色の髪が風に吹かれて揺れる。
「いえ、そんなには」
呼ばれた少年が簡単に会釈で返すと男は愛想の良い笑みを浮かべ少年の横に立った。
「何考えてた?」
「……別に何でもな」
「のことだろ」
一瞬目を大きく開き少年は目を走らせたが手をぐっと握るとただ小さく呟いた。
「当たり? ユウと同じ顔してたもんなー。アイツものこと心配するといっちょまえに人間らしい表情するんさ。大抵半分怒ってるけど」
「へぇ、神田が」
・
神田ユウ
二人の同僚の名前を出すと少年は複雑そうに笑った。
「そ。むっかしから変わんねぇのアイツラ」
「……」
「あ、電話してみたらさ、はまだ本部に待機中だってコムイ言ってた。危険は無さそうだけど」
「そう、ですか」
少年は一瞬不審そうに男を見たがすぐに流れていく景色に視線を移した。
逸らした向こう
「うわお。ピチピチ!」
「その言い方はヤメようねちゃん」
科学班の研究室に入るとは一着の服を渡され、別室で着替えるよう支持を出された。
支給された新しい団服はぴったり体に張り付き、以前より重さを感じさせない。
着替えて研究室に戻るとコムイが微笑みながらを眺めた。
「キツくは?」
「ない。うん全く」
はご機嫌に答えた。
クルリと回ると右肩に吊るされた金色の飾緒が揺れる。
「ズボンはどう? 長さ」
「もっと長いのがいいです」
「ヤだ」
「エェェェェ希望きいてくれるんじゃないのー!?」
「希望はきくけど全部が全部叶えられるワケじゃないんだよねー」
「いやこれ叶えられる範囲ですよ絶対」
研究室の中央でいつも通りに会話する二人を科学班以下数名が訝しそうに見ていた。
喧嘩したんじゃなかったのかあの二人。
昨日司令室でのひと悶着は数名が既に知っていることだった。
先ほどコムイがを呼ぶようにミランダに言付けた時顔を曇らせたが、普段と変わらない子供のようなに肩透かしと安堵を一編に喰らった気になった。
そういえばニワトリは三歩歩けば物事を忘れるという。似たようなもんかも。
科学班班長は口には出さずに思った。
「そういえば」
埒があかないと感じたのか、がさっさと話をかえる。
「ミランダがやたらフラフラしてたんだけど、何でですか?」
特に他意はない質問にコムイはんー、と軽く唸った。
「彼女はね、今特訓中なんだよ」
コムイの言葉だけでは理解できないらしい。が眉を顰めてコムイの続きを待っている。
「刻盤はもう見たね? 刻盤を発動中は彼女も眠れない」
「それはウチの龍彦だって同じです」
即座にが口入れするとコムイは口元だけで笑って首を振った。
「君のとは決定的に違う点は発動中、彼女に負担がかかることだよ。刻盤が攻撃されれば発動中の彼女へもダメージがいく。
眠気もある。それに君のように最初から無限の時を発動し続けることはできない」
呆気にとられたような、驚いたような、の顔が微かに歪んだ。
「彼女に今課せられた課題は早急にシンクロ率をあげて発動時間を長くすることだよ」
「じゃぁ」
口を開きかけて、がぐっと唇を結ぶのをコムイは目敏く視界の端に見た。
「君の場合、シンクロ率の上昇は何に結びつくんだろうね。攻撃力か、防御力か、指揮系統の強化か」
の言葉を引き継いでコムイが独り言のように答える。
「コムイさん」
「ん?」
コムイが視線をおろすとじっと自分を見つめる黒い目とかち合った。
「ちょっとぐらい騒音の苦情が出ても受け流してくれますか」
「……ご老公方が心臓発作を起こさない程度の音ならねー」
コムイが楽しそうに笑うとは即座に踵を返し、研究室を後にした。扉の横ぼーっと突っ立っていたゴズがそれを追う。
「これでちょっとは気は紛れるかな?」
リーバーは自分に向けられた上司の問いに答えられなかった。
シリアス成分が薄いよ。
クロウリー編の前あたり。
時間軸は原作に沿ってるけど内容があんま沿れてないよ。早く合流させたい。
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