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「私神田の子供が欲しい」
一瞬にして周囲の気温が下がった。
こども
談話室で暇な時間を持て余していた時だった。
が突拍子もないことを言い出すのはいつものことだしアレンももう慣れたつもりでいた。
適当に諭すなり受け流すなりと対処の方法もある程度わかっている。
しかし今日に限ってアレンは口を開けたままを凝視する以外できなかった。
はニコニコしながら神田の髪をいじっている。
「、最近は大人になりきれないで親になって育児ノイローゼにかかるケースが多いらしいわ」
アレンの隣でコーヒーを飲んでいたリナリーが諭すような落ち着いた声で言った。
「いや別に今すぐなんて言ってないよ。…神田隠し子いるの?」
「いる訳ねぇだろ」
神田が舌打ちをしてを睨む。
は気にせず神田の髪を手を梳き続けている。
「神田って髪サラサラでツヤツヤで、っていうか私よりも綺麗じゃない。畜生憎らしや!」
が自分で言っておいてヒステリックに神田の髪を手で払った。
サラサラと黒髪が流れる。
「コレ子供にも遺伝すると思うんだ。うん、息子より娘がいいな」
がうっとりするのも神田は無視してお茶を飲んでいる。
もう係わり合いになるのを止めてしまったようだ。
一方リナリーは困ったようにを眺めている。
どうやって止めようかというよりどうやってを黙らせようか考えているように見える。
「、神田の子供なんてどうせ性格悪いですよ。止めておいた方が賢明です」
なんとか頭が動き出したアレンが身を乗り出す。
神田がの肩越しに凶悪な目付きでアレンを睨んだ。
アレンは素知らぬ顔での手を両手で包み
「ですから、僕の子供でどうですか?」
笑顔で言った。
更に気温が下降する中、が首を傾げる。
「でも私が欲しいのはサラサラ黒髪の大和撫子なんだけど」
の言葉を聞いてリナリーが神田の顔を見てすぐ視線をそらした。半笑いだ。
「僕の子なら立派なイギリスの貴族界に名を残す紳士淑女になりますよ」
「あ、いいねそれ」
「それに神田みたいな捻くれたのと違って素直な良い子になると保証します」
「あー可愛いだろーなぁ」
他が黙っている内に着々とアレンが自分を売り込み、がそれを丸呑みしていく。
神田が何か言いたそうにアレンを睨んでいるがアレンはさらりと無視して話を進める。
「神田は乗り気じゃないようですが僕ならいつでも…いえ、今すぐにでもオッケーですよ」
「今すぐ?」
「はい。それじゃぁ僕の部屋に行きましょうか」
アレンはの手の甲に軽くキスを落とすとを立たせて手を引いた。
「念書書いてくれるの?」
「そんな紙切れよりもっと確かなものですよ」
「ちょっ、!」
「うわッ?」
やっと状況を把握して慌ててリナリーがを引っ張ってソファに引き戻し、神田が抜刀してアレンの前に立った。
剣呑な顔とにっこり笑った顔が対峙する。
「誰が捻くれてるだと」
「話が理解できませんでしたか?」
とても穏やかとは言い難い雰囲気の横でリナリーがの肩を掴んでを軽く前後に揺らす。
「、わかってる? どういうことかわかってるの?」
「え、わかってるわかってる」
揺す振られながらがへらへらと笑う。
リナリーは眉根を寄せてを見た。
「アレンが私に自分の子供を養子にくれる約束に、念書より確実な何かをくれるってことでしょ」
「…養子?」
リナリーがきょとんとするも依然としてが笑う。
「うん。いやーアレンってば良い人だねー。私責任もってアレンみたいな良い子に育てるから!」
そういえば自分で産むとは一言も言ってなかったなこの子。
リナリーは一瞬頭を抱えてちらりと隣を見た。
まだ二人睨み合っている途中だ、その内痺れを切らした神田が六幻で斬り付け始めるだろう。
「……ちょっと、」
リナリーはこっそり立ち上がりの手を引いて談話室から抜け出す。
「リナリー、どうしたの?」
「コムイ兄さんがクッキーくれるって言ってたから行きましょう」
「行く行く」
台風の目はさっさと談話室から抜けたが、神田とアレンは数時間程飽きずに口論していた。
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