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「…い、…オイ、起きろ」
「ん〜?」
居残り
談話室で寝てしまうのは最近よくあることだった。
アレンもリナリーもラビも任務でいないしコムイさんは仕事、唯一残ってる神田は四六時中遊んでくれるわけじゃない。
なんだか最近本部内もバタバタしてるし、めっきり人数の減った談話室のオレンジのソファに埋まるのが私の日課だ。
でもソファの一つを占領してぐうぐう寝ていると夕方になって起こしてくれるのは100パーセント神田だ。
目を開けると神田の怒ったような困ったような顔が目に入った。神田は表情のバリエーションが少ないからわかりづらい。
「あ、おはよう神田」
「……腹、出てんぞ」
「え、ヤだ嘘ン」
慌てて起き上がって服を直すと神田が元の仏頂面に戻っていた。
少し冷えたかもしれない、お腹のせいかな。
そう思いながら神田の顔を見ていると妙な違和感に気付いた。
何も言わないで私をじっと見てる。元々無口だから何も喋らないのは普通だけど。
何だか目をそらすこともできなかった。私の前で神田は立ったままピクリとも動かない。
ぜんまいでも切れたんだろうか。
「神田? 何、遊んでくれるの?」
私は神田のゼンマイが本当に切れていないか確認した。
どっちにしても多分遊んではくれない。神田はラビとかアレンと違ってノリ悪いから。
神田が少しだけ頬を痙攣させる。
「俺は今から任務に行く」
「えぇぇぇぇズルイ! 何ソレじゃぁ私一人で留守番?」
リナリーもいないアレンもラビもいない、神田もいなくなる。けど私はひとり留守番。
何コレナニコレ、もしやこれはコムイさんのイジメ!?
「ちなみに、誰と?」
「デイシャとマリ」
「うわ羨ましい!」
マリさんってあの人だ、あの背の高い変な髪の毛の人。
マリさんよく飴玉くれるし撫でてくれるから大好きだ。和むし。
「神田ちょっと待ってて、私コムイさんにメンバーに加えてもらうように駄々こねてくる!」
司令室に向けていざ出発!
と意気込んで身を乗り出したのに深く沈むソファに足をとられて派手に転倒した。寝るには気持ちいいんだけど動きづらい。
ていうか神田がどいてくれたら一番早いんだけど。
「行くな」
声を低くして神田がソファと奮闘する私の肩を掴んだ。
ぐっと力を入れられてソファの上で神田に向き直ると神田は私を押し込めるように上に覆いかぶさる。
明るいオレンジのソファが少しだけ神田の重みに軋んだ。
背凭れと神田とサンドイッチ状態で身動きがとれない。何、身長の差? コレ身長つか体格の差のせい?
神田は私の背中に腕を回すともう一回「行くな」と言った。
顔を上げると神田の顔は見えなかった。代わりに黒い肩越しに外の真っ青な空が映った。まだお昼か。
「神田がハグなんて珍しいね、何の心境の変化ですかジャパニーズ?」
和洋の文化を話に出すと神田はいつも不機嫌になる。
私はいつもわかってて言うのだが今日はどういうワケか叩かれない。
不思議に思って黙っていると珍しく神田から口を開いた。
「俺が今から言うことは守れ。いいか」
「え、何が? よくない」
『今から私が言うことを守りなさい、』
『ハイ、お父様』
『父が居ない間は留守番をキチンとすること。いいな?』
「留守番しろ」
「……神田?」
「ここからは出るな。本部に居ろ」
「どういうこと? 私そんな箱入り娘?」
そのまま神田は口を閉ざしてしまう。
神田が何か言ってくれるのを期待してちょっと待っていたが私の質問に答える気は更々ないようだ。
「神田、私それ約束できないよ。任務になったら嫌が応でも外出なきゃなんないし」
「司令は来ない」
「は?」
「…じゃあな」
神田は私の前髪を掻きあげて親が子供にするような、軽い額へのキスをするとさっと体を離した。
私はぼんやりと咽に飴玉が詰まったような、神田の苦しい表情を見ていたが神田はそのまま無言で踵を返し部屋から出て行ってしまった。
嵌め込み窓の向こうでゆっくり雲が流れていく。
実はアレ、妖精の悪戯じゃないだろうか? ブラウニー? アレ違うなぁ。
前髪を直しながら私はもう一度ソファに沈み込んだ。
こっから原作に沿うのかな? そうでもしないとティキとか一生出せない予感。
時間的にはアレン・リナリーが巻き戻しの街に行ってるらへん。
神田の班はちょっとだけ出発が遅かったと勝手な設定。神田君出発直前にコムイあたりにこの事でからかわれるがいいよ。
つかヒロイン内部のこと何もわかってないじゃないか。
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