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寡黙で短気な友人の部屋を訪れると
やっぱり嫌そうな顔をされた。
ハロウィーン3
「神田ー! ト……神田ー鍵開けてー!」
「鍵閉めてんのかよアイツ……」
『勢いよくドアを開けてユウの不意を突こう』作戦は鍵という防衛策に見事未然に防がれた。
どんどんとがドアを叩くと苛立たしそうなユウの声が中から響く。
「うるさい」
薄くドアが開く、中から心底煩わしそうな友人の顔が見えた。
「トリック・オア・トリートさ!」
「おかしー!」
「用意してない。じゃぁな」
「うわ、待って待って!」
構っていられない、という風にユウが舌打ちをする。
閉められかけたドアにが反射的に足を挟んだ。
「か・え・れ・よ!」
「ヤーだー!」
ギリギリと双方必死になってドアの境界線で攻防を続けている。
が買う買わないで問答する押し売りと主婦のようだ。
「神田、足痛いよ!」
「なら足どけろ」
「挟まって動けないの!」
痛い痛いとが喚くとユウは眉間に皺を寄せてまた舌打ちした。
「よし! とった!」
意気揚々とが緩められたドアに手をかける。
無理矢理開けるとそのまま勢い余ってユウと衝突した。
「このッ、バカが!」
「痛い!」
思いっきり胸を押されてユウが一瞬顔を歪める。
体勢は崩さないままの頭に拳骨を振り下ろした。
結局ドアが閉まろうが開こうがは痛い思いをしている気がする。
「二人ともとりあえず落ち着くさ」
「テメェ何勝手に部屋上がりこんでやがる!」
敷居を越えただけで物凄い威嚇された。
「いや、このまんま廊下で騒ぎ続けるんも迷惑かと思って」
騒ぐ、という行為はどこでやっても迷惑なことに変わりない気がするが黙っておく。
「神田、トリックオアト」
「用意してない。帰れ」
何とか部屋に上がりこんで会話に持ち込んだが簡単に一蹴される。
「嘘! 部屋に一つもお菓子がないなんて変だよ!」
それは個人の勝手じゃなかろうか。出掛かった言葉を飲み込んで吸血鬼に仮装している同僚を見る。
「無ぇもんは無ぇ」
ユウの頑なな態度はこれ以上妥協の余地がない。
というか用意してないものを寄越せというのは無茶がある気がしてきた。
「…………お前のその格好、去年ラビがやってたもんだよな?」
椅子にどっかり座ってユウが投遣りに言う。お菓子の会話はさっさと断ち切りたいらしい。
「うんそう、借りた。吸血鬼!」
「ふーん」
それでもやっぱりそうでも良さそうにユウが相槌をうつと机の引き出しを開けた。
「コレやるから帰れ」
もしかしたら実はお菓子の一つ用意してたのかも、なんて淡い期待を持ったが見事に裏切られる。
ユウが手にしているのは赤いインク壷だ。
「いくら吸血鬼だからってせめてトマトジュースでお願いします神田さん!」
「ガタガタ抜かしてっと口に流し込むぞおい」
静かに唸る友人のこめかみにはっきりと青筋が浮かんでいる。
「ラビ、エマージェンシー、エマージェンシー!」
「、とりあえずこっち、こっち来るさ」
無音の警告にが思わずあとずさる。
お菓子貰ってなくて尚且つ悪戯されるというのは最悪のパターンではないか。
『〜居るでしょぉ?』
コツコツとドアがノックされる。
続いて聞き覚えの無い小さな女の子の声が響いた。
「え、あ、はいはい?」
が一瞬首を傾げたがドアが薄く開いて応答に出る。
ユウと目を合わせるとユウもやっぱり訳がわからない、という顔をしていた。
「え、うんじゃぁ わっちょ」
の声にドアの方を見遣ると隙間から伸びできた手にが引っ張りこまれるところだった。
「?」
パタリと軽い音がしてドアが閉まる。
後を追うように急いでドアを開けると何も無い廊下が広がっていた。
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