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「やほーアレン。トリック・オア・トリート!」
「いらっしゃい! 二人ともお待ちし…………」
「あ痛たたたたたたたたたたたたた!!!!!!!」
「ラビ、何のつもりなんですかねぇ?」
「俺じゃない俺じゃない!!」
ハロウィン2
自室の扉をあけて二人を確認した瞬間アレンの右腕が閃く。
強大な爪を持った手は真っ直ぐにラビの頭を掴み、ギリギリと締め付けた。
「え、そうなんですか? 僕には貴方がに何か吹き込んだようにしか思えませんけど」
笑顔をつくったままでそれでもラビを離す気はないらしいアレンが言う。
ラビはじたばたと腕で何回も空中を掻いてもがいた。
「俺だってちゃんとに言ったさ!」
「ふーん。へぇーぇ」
アレンが凡そ白けた風に相槌をうつ。
さっと顔色を失ったラビはすぐ横のに助け舟を求めた。
「! そうだよな、俺着替えろって言ったよな!?」
「え、何が?」
「痛たたたたたた!!!!!」
求めた助け舟は泥舟だった。
「、いいから着替えて下さい、ほら、僕のズボン貸してあげますから」
慌ててとラビを部屋に招き入れるとアレンはの肩を掴んでグロテスクな置物の陰へ連れ込んだ。
「え、別に大丈夫だよ。っていうかリナリーのスカートとあんまりかわらないよ」
「 ダ メ で す 。 お腹が冷えたらどうするんですか!」
顔をしかめるアレンにがむぅとかぐぅとか唸る。
は先ほど壊した天狗の衣装の代わりに去年ラビが使った吸血鬼の衣装に着替えたところだった。
スリットの入ったシャツにズボン、ブーツ、マント、尖った歯。
全てラビ用に合わせて作ったものだったのでには少し大きいものばかりだった。
マントは肩幅が足りずに半分肩が出てしまっているしシャツはだぼだぼと襟口が広くなり、ワンピース並に長い。
ズボンは丈が長くて引き摺る上にウエストが余り、ブーツは無論サイズが合わない。
子供が無理して親の服を着たときのように可哀想なことになっていた。
マントやシャツはそのままでも支障はないもののズボンとブーツは問題だった。またコケる可能性が高い。
はズボンをいつも履いているスパッツに変えて、ブーツも自分のものにした。
元々長めのシャツだった所為でのスパッツはすっかりシャツに隠れてしまっている。
脚が出るのは時期的に寒い気もしたが今日一日歩き回ることを考えれば平気だろうとは判断した。
すると途端にラビが慌てて飛んでくる。ズボンを履くように諭された。
そして、今また同じようにアレンから説教を喰らっている。
「アレンのも多分サイズ合わないよ」
「そんな格好で一日教団内を歩き回るよりマシです」
「ベルト穴だって足らないよ」
「ピンで留めてあげます。丈は自分で折って下さい」
ここまで言われては黙り込んだ。
抵抗はあるものの言い返す材料がない。
「何でそんなにズボンにこだわるの?」
が頭から疑問に思っていたことを口にする。
一瞬アレンは唖然とした表情でを凝視したが、すぐ目を逸らした。
「だって、なぁ? アレン」
いつの間にか回復を遂げたらしいラビがアレンの肩に寄りかかる。
肩に重みを感じながらアレンはこくこくと頷いた。
「ちょっと、二人だけ通じ合っちゃっても私わからないんだけど」
疎外感を感じてがむっとした。
「や、その……の今の格好」
「履いてないように見えるんさね」
言いづらそうにアレンが口を噤みラビが続いた。
「?」
がきょとんとして二人を見る。
「スパッツもブーツも履いてるもん。マントあるから大丈夫だよ」
「一緒一緒。も一応女の子なんだからそんな扇情的な格好ヤメるさ」
「一応って一応って!」
「ほら、これに履き替えて下さいよ。僕ら出て行きますから着替えたら呼んで下さい」
アレンが有無を言わさずに自分の黒いズボンを押し付ける。
「えぇー」
「着替えないと用意したお菓子あげませんよ」
お菓子、その一言はに十分な効果をもたらした。
沈黙は肯定ととってアレンがラビの肩を押して廊下に出た。
「アレーン、ラービー。きがえましたぁー」
内側からノックして着替え終えた合図をする。
「入りますよ?」
「あーい」
金属の摺れる音がしてアレンが自室の戸を開ける。
先ほどの格好に先ほど渡したズボンがプラスされたが腰に手をあてて仁王立ちしている。
「緩くはないですか?」
「うん。大丈夫」
の返答にアレンは満足そうに破顔した。
「じゃぁ二人とも、遅くなりましたけど」
アレンが部屋を横切って棚から缶を取り出してくる。
「ハッピーハロウィーン」
ロンドンの街と馬車の描かれたクッキー缶だった。
「ありがとう!」
「ありがとうさアレン」
一人ずつそれを受け取って二人が幼い笑顔を見せる。
「ハロウィン楽しんで下さいね」
「うん!」
アレンが少し屈んで二回、と頬をくっつけた。
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