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※序章以前のお話です。
「ハッピィバースデートゥユー!」
私そう言っただけなのに、おかしいな。
何で私の背中が床とごっつんこしてて
何で神田が私の上に乗ってて
何で六幻の切先が私の目と鼻の先に突きたてられてるんだろう。
誕生日
「って、いう訳なんですよラビ」
「さっきの話からじゃ俺が殴られる道理がわかんないけど、わかった」
神田と任務があって、道中ラビとブックマンのじいちゃんを拾ってすぐのことだった。
朝甲板掃除を終えてカレンダーを見ると今日は6月6日、神田の誕生日じゃないか。
私は着替えてすぐ神田の部屋に行き誕生日おめでとう!と言っただけなのに怒られた。
あんまり唐突だったから吃驚して逃げてきたけどなんだか理不尽な気がしてとりあえず廊下にいたラビを殴ってみた。
「神田殴ったら私が殺されかねないじゃないの。目だけで人殺す勢いだったんよマジ。その内ビーム出るよ」
でもビームが出たら出たで便利かもしれない。わざわざ六幻なんかで斬らなくてもアクマ倒せるんじゃないか。
だったらかっこいいかもしれない。惚れるかもしんない。
「アイツ〜…誕生日嫌いってわけでも……」
ラビが私に殴られた肩をさすりながら考え始める。
何か考えてるんだろうけど、ラビの場合ぼーっとしてるだけのように見えるから様になってない。
「…は神田の下の名前知らねーんだっけ?」
「神田って神田のみが名前じゃなかったんだ」
ラビみたいに神田の二文字だけかと思ってた。
「あれ、でも俺とアイツが話してる時何回も横に居たよな」
「ラビ一回も神田を名前で呼んだことないよ」
ラビが不思議そうな顔をして私を見る。
そんな顔されてもわかるわけない。
「昨日の夕飯ん時も俺アイツの下の名前で呼んだぜ?」
思いっきり横に居たじゃん、とラビが言う。
「ゴメン、ブックマンのじいちゃん眺めてたから聞いてなかったかも」
ブックマンのじいちゃん可愛いから眺めてるだけで幸せな気分になれるんです。
ラビいらないからじいちゃんだけでも船に残ってくれないかな。
「いやー? 俺の前で何回も"ユウ"っつってる筈だぜー?」
「そりゃあ"ユー"ぐらい言うよ。英語だもん」
もしかして私はラビに"ユー"の意味すらわからないとでも思われているのだろうか。
だとしたら頭が良くないのは認めるけど、ショックだ。
「いやいやいや。"あなた"の"ユー"じゃなくて神田ユウっつうの、神田の下の名前」
「え、嘘!」
私ラビが「ユウ」っていう度脳内で「あなた」に変換してた。
「ユウの髪長くて邪魔だなー」とかも「あなたの髪長くて邪魔だなー」と言ってるんだとばっかり。
うわヤダ、恥ずい!
「なんで言ってくれなかったの!?」
「いや、知ってるもんだとばっかり思ってたからさー」
「わからないよ!」
「あいつ下の名前嫌いみたいだから次言って勘違いされたら本気で殺されるかもなー」
けらけらと笑うラビが段々憎らしく思えてきた。
やっぱりじいちゃんだけ捕まえといてラビだけ龍彦から落としてやろうか。
ラビへの殺意が芽生えたところで私はもう一度神田の部屋に行ってみた。
今度はユウもあなたもNGワードだ!
「かんだ〜?」
ドアをうっすら開けると神田がこっちを睨んですぐ六幻に視線を戻した。
ヤバイ、機嫌が最高にヤバイ。今日が私の命日かもしれない。
私はドアを開けて音を立てずに神田の横に座る。
神田は表情も変えず黙々と六幻の整備をしている。
カタナってツルツルしてそうだな、綺麗だな、指紋つけたいな。
誘惑に耐えながらじっとしていると意外にも神田が口を開いた。
「…悪かったな、さっきいきなり刀突きつけて」
口から出た言葉も意外だった。
多分これ神田の皮を被った他の人だ。いや絶対。
本物の神田はきっとどこかの森にでも落としちゃったんだ。
「んだよ」
私が神田らしき人の顔をじっと見ていると睨まれた。
謝ってる人の態度にはとうてい見えない。
「神田、本物?」
「……斬られたいか」
「ごめんなさい」
六幻がなんか良い音したから思わず後ずさってしまった。
なんか私が謝る側になってるし。
この不遜な態度は多分本物だ。
「とりあえず、神田誕生日おめでとう」
「ああ」
神田が私の頭を軽く叩いた。
微かに神田が嬉しそうに見えたのは秘密だ。
ケーキ用意しても食べなさそうだったから、朝食・昼食・夕食一日のメニュー全部ソバにしたらラビから凄い苦情がきた。
ブックマンのじいちゃんもあまり嬉しそうでなかったからもう止めとこうと思う。
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