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「え? 神田、ストップストップ。いやマジで」
「待たねぇ。動くんじゃねぇぞ」
なんだアレ。
5
シャワーを終えて部屋に戻ろうとしたアレンは思わず足を止めた。
灰色の廊下に黒い二人の影、小さい方がで大きい方が神田だ。
神田がを壁に押し付けて六幻を構えようとしている。
がまた六幻を物干し竿にでもしたのだろうか。
遠くからでも神田が怒っている空気が伝わってきた。
「アーレーンー! ヘルプヘルプ!」
とばっちりは食いたくないなぁ、とぼんやり考えているとが手を振ってきた。
つられて神田がこちらを向く。どう見ても怒りのオーラをアレンにぶつけている。
逃げ遅れたようだ。
「女性に暴力とは褒められたもんじゃないですね神田」
「そうだよ、褒めないよ」
アレンがに加勢することを決めてツカツカと近寄る。
はアレンの言葉をどこか間違えて解釈してしまったらしい。
「モヤシには関係ねぇ」
「うん確かにモヤシもナスビも関係ないよね」
神田が壁に当てていた腕を離してアレンを睨む。
誰も説明しないので神田のいうモヤシの意味がは未だわかっていないようだ。
のせいで緊張感がまるでない。
「とりあえず、全部カンダが悪い。ですので神田、に謝って下さい」
「あぁ?」
神田の額に青筋が浮き上がる。本気でキレそうだ。
「そうだよ、神田が悪い」
「お・ま・え・が・言・う・な!!」
神田がの頭を掴んでの頭をぐらぐらと揺らす。
このまま気迫だけで彼女の頭を握りつぶしてもおかしくはない。
真剣にの頭が危険になってきたのでアレンはと神田を引き離した。
は酔ったーなどと言ってアレンの腕にすっぽり収まっている。サイズが調度良い。
「アレンは紳士だね。イギリス紳士っぽいね」
「イギリス人ですよ僕」
がパッと顔をあげる。アレンと視線がかち合った。
「私もイギリス出身だよ。パパがイギリス人なの」
嬉しそうに目を輝かせる。愛国心が強いのだろうか。
「でね、ママンは日本人! つまり神田とアレンを混ぜたようなか」
「それ以上言うな気持ち悪ィ」「、少し黙って下さい」
神田とアレンの声がステレオにの耳に入る。
は不服な様子でアレンを見上げている。
「神田とアレンは混ぜると危険なの?」
「というか混ざりませんから。水と油ですよ」
アレンがの頭を撫でながら言う。
幼い子をあやす、というのはこういった感じだろうか。
「……」
「あれ、神田どしたの?」
神田が無言で踵を返すとが目敏くそれを見つける。
の問いかけも無視して、神田は振り返ることなくそのまま部屋の方へ歩いていった。
神田が見えなくなるとが一人納得したように頷く。
「あ、そうか。そろそろ就寝時間か。神田の体内時計って凄いね」
違うと思う。アレンはそう思いつつ曖昧に笑って頭を撫で続けた。
「それじゃ、おやすみアレン」
が背伸びをしてアレンの頬にキスを落とす。
「良い夢を、」
アレンがの額にキスを返す。
はアレンの頭上にいたティムキャンピーを手のひらに乗せて、同じようにおやすみのキスをする。
そういえば、おやすみのキスなんて何年振りなんだろう。アレンがそう思うのを遅らせる程自然な流れだった。
腕を放すとはくるりと回って神田と同じように自室へ向かった。
「……」
「ん?」
アレンの神妙な声にが立ち止まって首だけ回す。
「神田にも、いつもはやってるんですか?」
「おやすみのキス? さっきやろうとして、怒られた」
ジャパニーズは奥ゆかしいんだねー、一つ屋根の下の仲間なのに。とが笑う。
さっきの騒ぎは東洋と西洋の文化の違いの所為だったようだ。それだけではない気もするが。
「おやすみなさーい」
はにっこりと笑ってまた無彩色の廊下を歩き始めた。
次の日、アレンの時だけシャワーのお湯が出なくなり軽率だったとアレンは後悔することになる。
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