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「アレーン、ご飯だよー。食堂おいでー」
部屋で休んでいたらパイプからいきなりの声がしたから僕は思わずビクっとした。
なんか吃驚してばっかりだな、今日。
4
アレンが食堂につくと既に神田がまた一番端に座っていた。あそこは指定席なのだろうか。
「アレン何かアレルギーとか嫌いなものある?」
隣のドアから顔を出したが言った。
シェフ帽に白い服を着ている。なんだかコックというより給食当番のようだ。
「何でも食べますよ」
「そ。じゃあ座って座って」
がまた扉の向こうに引っ込むと神田がアレンを見た。
「お前、そこ座るんじゃねぇぞ」
そこ、と指を差したのはアレンの目の前、神田から対角線上にある椅子だった。
「何で指図されなきゃならないんですか」
アレンがムっとして言い返す。
「お前がそこ座るとが『じゃあ私は二人の真ん中!』とか言ってマジでテーブルの真ん中で物食いだすんだよ。ウゼェ」
神田が苛々と、それでも真に迫った感じで言う。
「……それは…良くない、ですね…」
神田の態度からしてきっと前例があるのだろう。
アレンは大人しく神田の斜め向かいに座った。
「はーい、前菜主食デザート全部いっぺんに出しちゃいまーす」
ガタガタガタ
2,3分してコック服を脱いだがカートを2台押してやってきた。
カートをテーブルの横につけると、手際良く料理が並べられていく。
「アレン寄生型よね? 足りなかったら言ってね」
アレンの前に神田の二倍の皿が並ぶ。どうやらカート一台分全てアレンの夕飯になるらしい。
「これ全部が作ったんですか?」
「神田が作ったように見える?」
綺麗に皿を並べ終えたがけらけらと笑ってアレンの前に座る。
「いえ、神田はソバしか作りそうにありませんし」
「そうだね、毎日ソバなんて考えられないね」
「斬られたいか?」
会話が神田の癪に障ったらしい。神田が背につけている六幻を掴んだ。
どうやら物干し竿にさせないために身に付けることにしたらしい。
「はい、いただきまーす」
が神田を無視して手を合わせる。
同時に神田の舌打ちが聞こえた。
「あ、美味しい」
一口食べて、お世辞でもなく口をついて出た感想だった。
見た目や香りからも美味しそうだ、とは思っていたが食べてみると実際美味しかった。
同時に、どこかで食べた味に似ていた。
「ありがとう、帰ったらジェリー師匠に報告しとく」
は前菜も主食も素っ飛ばしてフルーツを頬張っている。
どこかで、というより教団本部の食堂と殆ど味が一緒なのだ。
ジェリーさんが師匠となれば納得もいく。
アレンは感心しながら着々と胃を満たしていく。
そういえば自分は料理の上手い女性、というのが理想のタイプだったなとテーブルの上の料理を見て思う。
もっとも、給食当番よりエプロンの方がより好みなのだけれど。
「ねぇ、神田、神田」
フルーツを半分残して、が神田の袖を引く。
黙々と食べていた神田は食事の邪魔だとでも言いたいかのようにを睨んだ。
「はい、あーんして」
フォークに刺さったマンゴーがついと神田の前に出される。
神田はとその赤い果物を交互に見る。
「お前何バッ…!」
ため息をつく神田の口に有無もいわさず果物がつっこまれる。
新婚さんのようなそうでもないような、たぶんいや絶対後者だ。アレンは二人を眺めながら思った。
「………不味い」
「えー」
マンゴーを数度咀嚼し、飲み込んだ神田が更に不機嫌そうに言うとが不平を漏らした。
「、何食べさせたんですか?」
「いや、神田蕎麦好きでしょ? だからマンゴーをそば湯につけてみた」
ほら、とが湯のみに入ったそば湯を指す。
「何でもかんでも蕎麦に結び付けんじゃねぇ」
「いやぁ、創作料理も最近どうかなって」
「センスねぇ」
「失敗は成功の母っていうしね!」
めげないから毒味ヨロシク! とが意気込む。
マンゴーにそば湯では先は遠そうだ。
「ちなみにそば湯はあっても蕎麦はこの船にはのせません」
が大人しくまたフルーツを食べ始める。
「そうなんですか?」
「だって蕎麦のせたら神田蕎麦しか食べないし、そんな神田へ嫌がら…ッ栄養が偏らないようにと想って」
彼女は嘘をつくのが最高級に下手なようだ。
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