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*ラッタルはほぼ垂直で艦が傾いている所為で転げ落ちそうだ
中の通路は狭くパイプや何かの線が無尽に張り巡らされている。
慣れるまで時間がかかりそうだ。
「私のほかにもう一人エクソシストが乗ってるの。食堂で待たせてるから一旦食堂に向かうね」
はそう言って悠々と前を行く。
2
「神田ー、ただーいまー」
扉が開く。装飾を施されたランプが二つ吊られている。
絨毯も壁に掛けられている絵も高価なものであろう。アレンは息をついた。
豪勢な部屋の真ん中に縦長の机、それを取り囲むように椅子が並べてある。
端の方で椅子に腰掛けていた人物がこちらを見た。
黒い目で一瞥すると明らかに聞こえるように舌打ちをして視線を元に戻して湯のみを口に運んだ。失礼だ。
「まぁ神田が不機嫌なのはいつものこととして。どうぞ座って、ミスターウォーカー」
「あ、はい」
アレンがに促されてテーブルに着く。意識的に神田から一番遠い所に座った。
がアレンの前に座る。
「改めまして、・です。ここの司令長官兼艦長兼参謀長兼航海長兼主計長兼機関長兼……何だっけ。
えぇと、とりあえず運営は全部私がやってるの。私も同じエクソシストなのよ、仲良くしましょうね」
「こちらこそ。あと僕のことはアレンで良いです」
「うん、じゃぁ私のことはでいいから。あとあそこで知らん振りしながらお茶飲んでるのが神田」
が笑って神田を見る。
神田はそれでも反応を示さない。
「知ってます」
「あれ知り合い? じゃぁ神田の紹介はナシで。あ、飲み物入れてくるね。紅茶かコーヒーかお茶かどれがいい?」
「紅茶でお願いします」
「オッケー」
そう言ってさっさとが隣の部屋に引っ込む。
司令長官兼艦長なら普通自分で紅茶を淹れるなんてしないだろうに。
そう考えると少しおかしかった。
「……」
が出て行ったドアをぼんやり見ていると神田が黙って立ち上がり一言も話さないまま部屋から出て行った。
やはり失礼だ。
「あれ、折角神田にもお菓子持ってきてあげたのに。湯飲み直してないし」
お菓子とティーセットの載ったトレイを持ったが神田の座っていた椅子を見て言った。
しかしトレイに載っているのはクッキーやビスケットで、どう見ても日本茶にはあわない。
「じゃ、ま、アレン一緒にお茶しながら話でもしよう」
多めに盛られたクッキーやビスケットを並べながらが言った。
ティータイムが終わるとアレンはに連れられて艦を案内された。
大体本部と似たような形になるらしい。個室が与えられて、各々好きなように過ごすようだ。
違う点は矢張り船自体が移動するということと時々アクマの敵襲があるということだ。
あと、よくわからないが『龍彦』の機嫌を損ねるようなことはしてはいけないらしい。
曰く『龍彦』は大変なヤキモチ妬きで以前は探索部隊の一人が何かでに抱きついた時シャワーが水しかでなかったりとかしたらしい。
不思議な話である。
「じゃぁアレンこの部屋使って。隣が神田で、そのも一つ向こうが私だから」
食堂から少し歩いた場所に案内される。
食堂との部屋は繋がっているようだった。
「じゃ、何かあったら私の部屋に」
「!!」
空気が振動する。
狭い通路に神田の怒声が響いた。
通路の向こうから足音を鳴らせて神田は真っ直ぐの元へ行き、アレンの制する間もなく彼女の胸倉を掴んだ。
「え、何、何? 何にご立腹?」
「神田何やってんですか!」
「黙ってろモヤシ!」
「モヤシ? モヤシ食べたいの? 朝ごはんにもやしがなかったから怒ってるの?
てゆーか怒ってるのはいつものことだし…何をそんなに怒髪天を突くような憤怒の形相になってるの」
が苦しそうに言う。しかし口から出る言葉は火に油を二、三滴垂らしているように見える。
「違うわ! テメェが六幻をまた勝手に物干し竿にするからだろ!」
「あぁ、シーツ持ってきてくれたの? ありがとう。それアレンの部屋のやつだから今取りに行こうと思ってたんだ」
「ちィッ!」
神田が手に持っていたシーツを床に叩きつけるとの悲愴な声を上げた。
確実に僕の名前を聞いて叩きつけた。どこまで失礼なんだろう。
「神田、を離してください!」
アレンが神田の右腕を掴む。
神田は鬼すら射殺せそうな目つきでアレンを睨む。
「うわぁ、神田絶対前世ヘビだよ、ヘビ」
の声に神田から更に殺気がピリピリと発せられる。
アレンはが口を閉じてくれるのを切実に願った。
『三番より、アクマ三体、二時の方角』
急にスピーカーからコムイの声が流れ、反響する。
突然のことにアレンが呆然としていると一瞬の間に神田はアレンの腕を引っぺがし、
は神田の腕を振り解いて二人競り合うように廊下を走って行った。
*ラッタル…階段。傾斜が急で最早梯子に近い。
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