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キャッシング
雨が降っていた。
激しい雨が横殴りに容赦なく降り注ぐ。
風も強い。
天候に構っている暇はない。
バリバリと空気を引き裂く音が聞こえ真っ黒な煙が船を包む。
途端、前方で光がチカチカと瞬き敵の来襲を知らせた。
次いで床がグラリと揺らぎ攻撃されていることを思い知る。
は艦橋を飛び出すと前甲板左舷側の機銃のもとへ駆け寄った。
黒服の彼女を見つけるや奇体の化物がニタリと笑う。
備え付けの機銃は本来二人で操縦するものであった。
は急いでペダルを回し外に向けていた機銃の銃口を回転させる。
アクマはの首目掛けて腕を伸ばす。
ギリギリまで腕を伸ばし、右側のハンドルを掴むと、轟音と共にアクマは焦げつき穴だらけになった。
ラビは槌を振るいながらの安全を確認しホっとする。
はまたペダルを漕ぎ船首へと向ける。
一人の男と一体のアクマが戦闘中であった。
「オイ、まさか」
言葉が出なかった。
はその男―神田の戦闘中を確認して尚、ハンドルを握ったのである。
雨の理由
グラリと男の体が揺れ、その場に崩れ落ちる。
ラビはただ目を見開いてそれを見ていた。
兎に似たアクマがその透明な瞳でうち伏せたエクソシストを見る。
凶器と思われる鉈を振上げると鉈は腕ごと吹き飛ばされた。
アクマが次の行動を起こすよりも早く、はその胴体めがけて何百発もの弾を撃ち込む。
独特の硝煙が吹き上がり、雨ですぐにおさまった。
崩れ、破裂したアクマの横で神田はピクリとも動かなかった。
「ユウ!」
神田から血が溢れていた。
ラビは段差を飛び降り、船首に向って走る。
先に着いていたは神田を仰向けに寝かせ微弱な呼吸を確かめた。
その横にフードを被った二人のサポーターが蒼い顔をして覗き込むように立っていた。
「スイマセン、彼を医務室まで運んで下さい。今から全速で本部へ帰ります」
は妙に落ち着いた声をしていた。
逆に慌て混乱しているのはラビである。
二人に友人を任せ立ち上がったの胸倉を掴むとはすこしだけ目を丸くした。
「何で撃った!」
普段見せない険しい形相で詰め寄る。
突然の出来事についていかない頭がヒートしていた。
「ラビ」
落ち着いている。
彼女は一言彼の名前を呼び、ラビの目をじっと見た。
早く放せ。そう言われている気がして腹がたった。
「ユウがいるの知ってて撃ったさ?」
「じゃ無かったら駆け寄らないよ」
「ッ」
ぐっと拳を握ると余計に憎らしさが増してきた。
友人だと今まで思ってきた自分がバカのようだ。
「ラビ、放して。早く神田の応急処置と針路を変えないと」
最後の自制心がラビの手を緩めた。
今ここでを問い詰めて時間を喰うのは得策ではない。
「おもーかじー30度! 最大戦速にて操縦をオートに切り換え本部へ向え!」
踵を返しがそう叫ぶと船が右へ傾いた。
が顔を上げる。
空いっぱいに広がる曇天を黒い瞳に映し、息をつくとこの傾斜にも慣れた様子で艦橋へ走り去った。
シリアス苦手なんですけど頑張ってみます。
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