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「アレン、それ以前に私ん家までの道、教えてほしいな」
「いいですけど条件付きです。やっぱり迷ったと認めるなら連れていってあげますよ」
「……」
⇒一旦家まで戻る
にっこり微笑む白い狼を前に赤頭巾は拗ねるように口をへの字に曲げた。
ハイ、迷子になりました。の一言で家に帰してやるというアレンの提案をの最後の意地が受け入れない。
アレンとしては別にが迷子を認めようが認めないが関係はないのだがの困った顔見たさに条件を出しただけで本気では言っていない。
いつまで意地を張っていられるか、20分ぐらいかなとアレンは心の中で無益な一人賭けをした。
「むー」
「どうしたんですか?」
「むーん」
「きちんと喋ってくれないと」
とアレンが睨めっこを始めて10分が経った。
は唸り始めアレンは更に惚けてみせる。
いたちごっこのように終わりの無いゲームには僅かながら苛立つ。
「狼なんかー怖くないー怖くないったーら怖くないー」
「別に脅してるわけじゃないんですかッ!」
アレンの言葉が急に途切れアレンがしゃがみこむ。
一瞬は状況判断ができず目を見開いたのだが頭に急に鈍い痛みが走ると反射的に頭を庇って狼同様しゃがみこんだ。
隕石でも降ってきたのだろうかと頭を押さえながら上を向くと見知った人間が拳を作って立っていた。
隕石の方がマシだったかもしれない、とは何となく思った。
「神田……」
「テメェ何ちんたら狼なんぞと油売ってやがる!」
「や、今帰るところであそばしたのよ。今」
眉間に三本程皺を寄せた母には頭を押さえながら立ち上がる。
母の向こうでアレンが大儀そうに立ち上がるのが見えた。
「神田、何の用ですか?」
「娘を迎に来ただけだ。喋んなモヤシ」
神田はアレンを振り返ることなくの腕を掴んでずかずかと歩き始める。
「え、お? ちょ、待ってよ神田。アレーン、また今度ねー」
腕を引っ張られながら後を振り向くと白い狼が苦笑しながら手を振っていた。
家に着くと神田はが持っていたバスケットを取りあげた。
「庭の水遣りと掃除と夕飯やっとけ」
「えー神田が行くのー?」
「寄り道するお前より俺が行った方が早いだろどう考えても」
別に寄り道したくてしたわけではないと反駁を考えたがは黙って神田を見送ることにした。
西の空が朱味がかっている。帰りは遅くなりそうなので一人で帰ってくるのは心細い。
母が行ってくれることになって良かったとはジョウロに水を汲みつつ考えた。
でも夕飯は神田が好まない洋食にしてやろうとも思った。
「帰った」
既に夜と呼べる時間帯になって家の扉が開く。
返事はなかったが神田はツカツカとリビングまで入ってくる。
祖母から押し付けられたお菓子の類をテーブルの上に転がすと突っ伏して寝ている娘に目を下ろした。
「おい、」
肩を揺すると寝言とも唸りとも判別の付かない声が返ってきた。
神田は舌を打ちキッチンへ目をやると既に夕飯は出来上がっているらしかった。
「」
もう一度肩を揺らし今度は更に軽く頭を叩いたが反応はなくテーブルにへばり付いていた。
再度舌を打って神田は起きる様子の無い娘を抱きかかえるとゆっくり娘の部屋まで歩き始める。
玄関を通った部屋を開けるとをベッドの上に慎重に寝かせて上から布団を被せてやる。
の頭を軽く撫でるとが身じろぎをする仕種を見せた。
そういえば寝相の悪い娘のためにいつかベッドに枠をうけてやろうと思っていたことを思い出し神田はベッドの大体の大きさを測った。
上を仰ぐと満月が煌々と空に鎮座している。
の頭巾を外してやり神田はフン、と鼻を鳴らすとカーテンを閉め部屋からさっさと退出した。
一万ヒットありがとうございました!
母もとい神田エンドです。アレン出張り過ぎ。
神田はママですが当然男ですよ(笑)
今夜はシチュー。でも神田ママはあえて箸で食べます。
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